2026/07/31 12:00
2026年7月11日にフランス・パリのArena Grand Parisにて開催されたヨーロッパ最大のJ-ROCKフェス【B7KLAN J-ROCK FEST】にMUCCが出演。彼らのステージの模様を記録した公式レポートが到着した。
いつもどおりのMUCCと、いつもとは少しだけ違うMUCC。このたび7月11日にフランス・パリ近郊のArena Grand Parisで開催された【B7KLAN J-ROCK FEST】に出演した彼らのステージングにおいては、そのふたつの表情が交錯していたように思う。
7月3日にブラジル・サンパウロでの【Anime Friends 2026】に参加したのち、9日のドイツ・ベルリン公演を経てMUCCが挑んだこの【B7KLAN J-ROCK FEST】は、日本のヴィジュアル系バンドたちが多く集った2デイズにわたる大規模なイベントで、我らがMUCCは初日のトリ前にあたる5番手として登場。暗転した段階から既に場内は大歓声であふれかえり、ほどなく「睡蓮」の演奏が始まると多くのオーディエンスは轟く音を全身で享受するような動きをみせていった。
思えば、MUCCは2005年にドイツでのメタルフェス[Wacken Open Air]出演およびワンマン公演で初の海外進出を果たし、それ以降も欧州、北米、南米、アジアなどでコンスタントにライブ経験を積んできたバンドにほかならない。しかし、2020年に予定されていた欧州ツアーがコロナ禍の発生によって全面中止となってしまったこともあり、今回のドイツ公演と【B7KLAN J-ROCK FEST】、そして13日にフィンランド・ヘルシンキで敢行された公演も含めて、MUCCが欧州に赴くのは約11年ぶりのことであったそう。けれども、会場にはMUCCのさまざまな時代のTシャツを着た夢烏ならぬMuckersが大挙して詰めかけており、それなりの時が経っても彼らがバンドとしてずっと支持され続けていることがよくわかった。
ちなみに、筆者が転換時間に喫煙所でVAPEをふかしていると、YUKKEファンだというスペイン人から《あなたは日本人ですか?わたしはこのスペシャルなイベントのためにパリへ来ました。いろんなバンドが好きですが、一番大好きなのはMUCCです。10代の頃からずっと聴いています。今は30代になりました》と日本語で話しかけられた。そこからはしばしMUCC談義に花が咲くという、思いがけぬ機会にも恵まれたことをここに付記しておこう。その御仁は日本のバンドを好きになったことから大学で日本語を専攻し、ここまで流暢に話せるようになったらしい。愛の力は偉大なり。
「Hello~♪」(逹瑯)
「睡蓮」を歌い終わった逹瑯がこう軽いトーンで挨拶をすると、そのあとに始まったのはヘヴィなバンドサウンドが炸裂する「サイコ」。ミヤのダイナミズム満載なギターワーク、YUKKEの躍動するベースフレーズ、頼もしいサポートドラマーとしてNatsu(NOCTURNAL BLOODLUST)が繰り出す強靭なリズム、それらのうえで闊達に暴れ回る逹瑯のエモいヴォーカリゼイション。どれもがMuckersを激しく鼓舞していたことは間違いなく、曲中にはさまれる〈サイコ!〉の部分で場内から盛大なコールが湧きあがっていたことは言うまでもなかろう。
なお、普段であればYUKKEがアップライトベースを弾き倒すはずの「ファズ」については、さすがにあのサイズの楽器を1曲だけのために輸送するのは無理があるようで、ここではいわゆるノーマルなベースを派手に指弾きするかたちでの演奏となっていた。もっとも、イントロなどで聴ける逹瑯のブルースハープの音色はいつもとまるで変わらず。ミヤのカッティングに漂う切れ味の鋭さや、リフから感じられる熱量も健在。
「MUCCです。Bonsoir!えーとね…」(逹瑯)
ディープな世界観が凝縮されていた「アイリス」を歌い終えたあと、なにやらゴソゴソとカンペを拡げだした逹瑯は、ここから幾つかのフランス語を使ってMCを展開してみせた。日本人からするとその意味はよくわからなかったが、場内では一言発するごとに歓声があがっていたのでしっかりと“通じていた”ようだ。
「Enjoy tonight!よろしく!!」(逹瑯)
英語と日本語も交えつつのMCをはさんだあと、MUCCはここからアッパーチューン「アゲハ」や、80年代風サウンドがキラめいた「LIP STICK」などでArena Grand Parisをダンスフロアへと変貌させていくことになったのだが、この会場は東京でいえば有明ガーデンシアターをやや大きくしたような規模感。11年ぶりに訪れたパリで数千人をいとも簡単に踊らせてしまう彼らの手腕というのは、やはり尋常ではない。
また、ロックフリークなら世界中の誰もが知っているであろうNIRVANAの「Smells Like Teen Spirit」のフレーズを効果的に引用した「蒼」。普遍性を持った最新シングル表題曲「Never Evergreen」。この2曲が続けられたくだりでは、Muckersのみならず他アーティストのファンも含めた観客全員を彼らは音楽でたっぷりと魅了していくことになったはずだ。
「Hi!ありがとう。Merci. Thank you. I'm so happy to come back again. I hope to come back soon!なるべく頑張ります。よろしくお願いします!」(逹瑯)
近い将来に向けた希望が述べられたあとに歌われたのは「ニルヴァーナ」で、この曲では冒頭からシンガロングとクラップが大発生。もともとアニメ『妖狐×僕SS』のOPテーマとなっていた楽曲だけに、Visual-keiファンだけでなくJapanimationの愛好者たちにも深く浸透している強みが出たということだろう。つい先日には“クールジャパン機構の累積損失が540億円を超え、政府は廃止を含めた検討を始める”との由々しき報道があったとはいえ、音楽やアニメといった日本のポップカルチャーがこれだけ広く親しまれている事実を踏まえると、MUCCをはじめとする海外人気の高いバンドや、将来的にその可能性を伸ばしていけそうなアーティストたちに対する公的支援は今後もっと拡充されていい。世界には日本の文化を求める余地がまだまだある。そのことを、この夜のライブはまさに証明していた。
かくして〈こんな 世界中にこの歌を〉と高らかに歌われた「ハイデ」のあと、約1時間のステージを締めくくるべく放たれたのは、MUCCのライブでここぞという時にいつも演奏される「蘭鋳」ではなく…なんと「最終列車」。
「Tokyo from Paris…」(ミヤ)
ミヤがそう告げてからイントロが始まると、今日イチの爆歓声が場内より湧出。おまけに、これまたサビを一緒に歌っている観客たちも多数いた。実はこれも喫煙所で仕入れたネタにはなるのだが、某航空会社でCAをしているという日本語が堪能なフランス人男性と話した際には《明日はD'ESPAIRSRAYを観に来るのが楽しみなんだけど、MUCCの曲では「最終列車」が最も好き。とても日本らしくてノスタルジックなメロディが美しい。今日やってくれるといいんだけど》と言っていたため、きっとこの時の彼は会場の何処かで大喜びしていたに違いない。と同時に、そうした海外ならではのニーズを認識して「最終列車」をラストに持ってくるMUCCのホスピタリティが粋ではないか。
いつもどおりのMUCCと、いつもとは少しだけ違うMUCC。そんな両面を堪能することが出来たMUCCの海外公演を、個人的に初めて生で観ることが叶ったのは極めて貴重な体験になった。日本の夢烏たちと世界各国にいるMuckersのためにも、MUCCには来年の30周年という節目を前にこれからも飛躍を続けていって欲しい。
Photos:冨田味我
Text:杉江由紀
◎公演情報
【B7KLAN J-ROCK FEST】
2026年7月11日(土) Arena Grand Paris(フランス)
<セットリスト>
01. 睡蓮
02. サイコ
03. ファズ
04. アイリス
05. アゲハ
06. LIP STICK
07. 蒼
08. Never Evergreen
09. ニルヴァーナ
10. ハイデ
11. 最終列車
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